Monthly Archives: February 2012

なぜこの約6分の動画で人はこんなにも鳥肌が立つのか?

あまりに鳥肌が立って感動した動画があったのでここに書きたくなりました。これはfacebookでシェアされてたまたま観たものなんですが、直近興味がある分野に最終的にリンクしたのでそれも含めて面白い体験でした。

先ずはこの6分47秒の動画をご覧ください。鳥肌が立たなかったらすいません。

こちらの動画は「THE X FACTOR」というアメリカで放送中の大人気オーディション番組の最終ライブパフォーマンスの映像。その後実際に2011年度のWinnerとなったMelanie Amaroの最高のパフォーマンスです。

さて、私はこの短い動画でとても感動してしまったわけですが、サービスの作り手としてなぜこの動画でこんなにも鳥肌が立ったかを考えてみたくなりました。彼女の歌自体が素晴らしいからというのはもちろんなのですが、それ以外に見逃せない文脈や感動するコンテンツ作りにおける鉄則が見え隠れします。そして、そこから「ソーシャル時代における共有されやすいコンテンツ」のポイントも見い出せる気がします。そこでざっと思い当たるところを4つまとめてみました。

 

Gap/振り幅

「片方のヒレが無いカクレクマノミ」「子供に飽きられてしまった古いおもちゃ」など何らかのハンディキャップを背負った主人公が最後は超絶ハッピーエンドになるという、マイナスからプラスへの振り幅を利用するのはディズニー映画の鉄則ですが、この動画にもその振り幅の鉄則がちりばめられています。

 

・決してスタイルも良くなく、いわゆる美人とは言えないAmaroが、大観衆のステージに立ってひとたび歌いだせば、そこから放たれる圧倒的な声量と美しい声で観客を魅了するという振り幅

・一見機難しそうな4人の審査員が、Amaroの歌に徐々に心動かされ、最後はスタンディングオーベーションで大絶賛するという振り幅

・明らかに田舎から出てきた風な若い少女の味方は家族のみ。ただ、観衆が徐々に味方に付き、歓喜し、最後は全員がスタンディングでたたえるという振り幅

 

などなど。これでもか!というぐらいの振り幅の連続ですね。4人の審査員がそれぞれのタイミングで徐々にAmaroの歌声に感動してく様が4者4様で素晴らしいのも肝です。どこまでが演出かは知りませんが、うますぎる。

 

Family/家族愛

最初の1分間で「Amaroは家族が大好き」「家族もAmaroが大好き」「Amaroの大舞台に家族は心配で心配でたまらない」という”家族の絆”感が素晴らしい前フリになっています。その後のステージのシーンで一気に

「Amaroとそれを支える家族」

VS

「4人の審査員とその後方にいる大観衆」

という構図が現れます。これはもう、刀1本で鉄砲隊や弓矢を持った何千、何万という敵に立ち向かうサムライを応援する気持ちになります。大観衆が歩兵大群、4人の審査員が四天王の大ボスということですね。歩兵をバッサバッサとなぎ倒し、最後には四天王も一刀両断という最高のエンディングを迎えれば感動しないわけがありません。

 

Music/音楽の力

何よりも、Amaroの歌声が素晴らしい。これはもう説明しようが無いのですが、それ以外で音楽の力を感じるポイントがあります。それは効果的な「間」の使い方です。Amaroが歌いだす直前と、最後に審査員が「OK, Miami. Help me here!」と言ったあとの観衆の大歓声で効果的に”音のタメ”を使っていますね。一瞬のタメは、一気に映像に没入させる力を持っています。約6分の動画でこれだけこの世界に入り込めるのは、こういった音の使い方も効いているのだと思います。

 

Reality/実話である

最近facebookをながめているとやたらと「感動ネタ」がシェアされてきます。誰かが投稿した写真、誰かが人づてに聞いた話など。どれもだいたい30秒〜1分もあればそれらの”コンテンツ”を消費できるのですが、確かに結構感動したりもする訳です。ひとつの要因としては、それらがすべて「本当の話」だからです。もしかしたらねつ造されたものもあったかもしれませんが、あくまで共有されたほうとしては本当の話として見るので、それが心に1歩も2歩も踏み込んでくる要因なのだと思います。これはfacebookというソーシャルネットワークの特性でもありますね。

 

最後に。

 

もちろんこのMelanie Amaroのサクセスストーリーには続きがあり、メジャーデビューなどをしてしまうわけですが、先日行われた世界で最も高価なCM枠でも有名である「Super Bowl」のPepsiのCMに、あのエルトンジョンと競演する形で出演していました。こちらも良い”動画”なので最後に是非ご覧ください。あか抜けたAmaroちゃんにも注目(笑)

世界でいちばん高い”30秒枠”で活用されはじめるソーシャルメディア最新事例

みなさんは世界でいちばん高価な広告枠と聴いてピンときますでしょうか?

広告業界に詳しい人や感のいい人は即答できると思いますが、アメリカ人が最も好きなスポーツ、アメリカンフットボールリーグ「NFL」のチャンピオンを決める一戦、「スーパーボウル」のCM枠がその答えのようです。30秒のそのCM枠、リーマンショックによって一時は販売不振や値引きなどがあったようですが一転V字回復し、今年の平均放送権料はなんと史上最高の$350万(約2億2700万円)に達したとのこと。放送料の記録更新が話題になったり、実際約1億人がスーパーボウルを視聴するなどのスケール感もあってか、毎年価格が上がり続けています。ただし、昨今の放送料高騰の背景には、どうやらソーシャルメディアの台頭が大きく寄与しているようなのです。

 

最も有名なスーパーボウルのCM “1984”

こういった高騰の背景は知らなくても、このCMは知っている!という方は多いでしょうね。言わずと知れた1984年に発売されたAppleの「Macintosh」のCM、”1984″。IBMという巨人に立ち向かうAppleという構図をセンセーショナルに表現して話題を集めましたが、それだけこのスーパーボウルというのがアメリカ国民にとって特別であり注目が集まる祭典ということです。これが契機となりAppleは一躍注目を集めたという逸話が残るくらい、このスーパーボウルのCM枠に様々な伝統と価値がある訳ですね。

 

2011年に最も注目を集めたCM “The Force”

まさにこのパパ層にぴったりハマる、最高に心暖まるフォルクスワーゲンのこのCMは、2011年カンヌ広告祭の受賞作品にもなっています。ただし、内容よりも評論家の評価よりも注目すべきなのがyoutubeの再生回数で、現在なんと約5000万回。ここに、今ソーシャルメディアに注目が集まる要因があります。昨年のスーパーボウルから約1年がたっていますが、こうやって紹介されることによってまたfacebookやtwitterなどのソーシャルメディアによってこの”広告”が広がり続けています。

 >> VW’s “The Force” Super Bowl Ad Goes Viral

つまり今まではその伝統と瞬間最大風速に注目が集まっていましたが、今はCMを打ってからのソーシャルメディア上の広がりというのがこの30秒枠の価値を押し上げています。良いコンテンツはソーシャルメディア上の口コミによって長く大きく広がっていくことを考えると、今のスーパーボウル枠の役割は拡散への大きなキッカケづくりということでしょうか。

ちなみに、フォルクスワーゲン昨年の流れを受けて今年の新作はこちら。

 

2012年、さらに進化する”ソーシャル”を活用した取り組み

そういった背景を受けて、今年はソーシャルメディアやスマートフォンアプリを活用したよりインタラクティブな仕掛けがいくつも予定されています。コカコーラは専用Webサイトを用意し、CMに登場するキャラクターと連動する形でfacebook、twitterを活用してユーザーと対話するコンテンツを用意しているそうです。

Shazam

中でも注目なのが打倒コカコーラのペプシコによるCM。どうやらあのスマートフォンアプリ「Shazam」を用いてインタラクティブなキャンペーンを実施するそうです(Shazamは現在1億7500万ダウンロードを記録しているそう)。具体的には、人気オーディション番組「Xファクター」の優勝者がCMの楽曲として使用され、それをShazamで音声をスキャンすると特設ページにアクセス、そのパフォーマンス動画をダウンロードできるという仕掛け。実はこちらの記事(from Mashable)にもある通り、Shazamはすでに同様なキャンペーンでの実績があって今回スーパーボウルという晴れ舞台をゲットした模様です。また、メディアチェックインという概念では今年大きくブレイクしそうなGetGlueもチェックインキャンペーンを実施する模様、こちらも楽しみ。

消費者調査の結果、今年は約60%の視聴者がスマートフォンやタブレットなど、”セカンドスクリーン”を活用しながらスーパーボウルを楽しむとのデータもあるみたいです。さすが、こちらは本当に進んでいる。伝統のスーパーボウルのCM枠に、こういったソーシャルメディアやスマートフォンアプリ、そしてセカンドスクリーンのような概念が登場していることに、大きな期待と希望を感じずにはいられません。ただし、こういったソーシャルメディアや新しい技術を活用する上で、どこまでいっても大事なのは「伝えたいメッセージや目的が何なのか?」という点であり、”30秒の映像作品”というキラーコンテンツであり、ソーシャルメディアそれ自体が何か魔法を持っているわけではないという点は忘れてはいけませんね。

今年のスーパーボウルは2月5日。とは言えソーシャルメディアやスマートフォンアプリが実際どのような実績を残せるか、非常に楽しみです。良いネタがあればまたSymsonicでレポートします。

 

最後に、既に話題になっている今回放映予定のAudiのCM。ちなみに私はこのCMをPiterestで知りました。こういった新たなサービスが、2012年コンテンツの”ソーシャルメディアドライブ”を加速させますね。