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メッセンジャーアプリこそfacebookを越える最強のプラットフォーム

Text-messaging-etiquette

WhatsApp Messengerのエントリーでも記載した通り、「モバイルメッセージング」や「グループメッセージング」と言われる、いわゆる”メッセンジャーアプリ”はスマートフォンという概念とともに現れたAppStore、Android Marketというオープンプラットフォームの登場によってキャリアのビジネス構造をDisrupt(破壊)する形で多くのユーザーを獲得してきた。

Yahoo!→Google→facebook(or twitter)と大きな業界の構造変化が起こることによって移り変わってきたプラットフォームの覇者は、今度はインターネットの「モバイルシフト」という新たな構造変化によってFacebookを越える新たなプラットフォームが生まれてくる可能性を秘めています。その最右翼と言えるのが”メッセンジャー”アプリでしょう。

 

Kakao Talkが示す新しい可能性

そのメッセンジャーアプリの新たな可能性を示してくれたのが韓国発のKakao Talk(カカオトーク)です。もはや説明不要の3000万ユーザーを誇るメッセンジャーアプリですが、スマートフォンが急速に普及するIT先進国韓国ではメッセンジャーアプリとしてはほぼ独占的な地位を占め、「メールして」ではなく「カトック(カカオトークの略字)して」という造語が登場するぐらいの普及度を誇ります。そのKakao Talkがサービスの収益化の一環として10月よりスタートした「Plus Friends」というサービスに、このメッセンジャーアプリのプラットフォームとしての大きな可能性を感じます。

誤解を恐れず書きますが、シリコンバレーでは投資環境が整っている分、良いサービスを創りユーザーを集めさえすれば資金調達によって当面の運転資金は確保され、最終的にはバイアウトというEXITルートを明確に描くことができます。特にグループメッセーングとして台頭したBelugaやGroupMeには明確なビジネスモデルは無く、実際それぞれFacebook、Skypeにバイアウトという形になりました。

逆にそういった環境が弱い韓国においては、サービス単体として収益化の絵を描かざるを得ない状況であり、そういった中でひねり出したのが「Plus Friends」だと考えます。

 

「Plus Friends」が目指す世界観

Kakao Talkの「Plus Friends」は実際の友人以外に、企業や有名人と友人関係を結べる機能です。今回パートナーとして発表したのは21の小売りや出版社、放送局、食品会社、ゲームデベロッパー、そしてK-popスター。例えばその1社であるステーキの「アウトバック」の利用イメージは、友人のメッセージと同じ感覚でアウトバックからモバイルにプッシュでメッセージが届く。その内容はクーポンなどのユーザーにメリットがあるキャンペーン情報で、アウトバックにとっては来店促進のキャンペーンになるという仕組み。K-popスターなら新曲の案内やオフショットなど、よりファンに近い形でコミュニケーションをとることができます。

「Plus Friends」が実現しようとしている世界観は、実はfacebookやTwitterのそれと大きく違いはありません。facebookがpageにて提供しているものや、Twitterのアカウントやpromoted tweetに近いものではあります。ただし、Kakao Talkの「Plus Friends」にはそれらを大きく越えるモバイルならではメリットがあるように思えます。

 

限られた可処分時間の奪い合い

実際にスマートフォンユーザーならば分かると思いますが、毎日使うアプリというのはそう多くありません。日々何千、何万とリリースされるアプリの中でも、ユーザーが毎日使う依存度の高いサービスはほんのひと握り。インターネットがモバイルシフトしてくなかで、様々なカテゴリのアプリ、サービスがありますが、最も普遍的であり日常的なものは「家族や友人とのコミュニケーション」でしょう。実際Kakao Talkは現在1日に6億のメッセージ数を記録し、WhatsApp Messengerに至っては1日に10億のメッセージがやりとりされています。

つまり”メッセンジャーアプリ”というのはものすごく依存度の高いサービスであり、かつネットワークの外部性が働くためにまわりの友達が使えば使うほどその利便性が高まり、一極集中へと向かっていきます。その最強に依存度の高いサービスの、よりユーザーにとって身近な「友人」と並列に並ぶことができるのが「Plus Friends」が描く世界です。

セレブの日常をフォローするにはTwitter、飲食店のクーポンをゲットするのはGroupon、友達とのコミュニケーションはfacebook、と今まで使い分けていたものを「メッセンジャーアプリ」ひとつで済ますことができるなら、ユーザーは最終的にはそちらを選択するのではないでしょうか。またそのプラットフォームを利用する企業や芸能人にとっても、モバイルの「メッセンジャーアプリ」以上にユーザーに近い位置(物理的にも精神的にも)でコミュニケーションできるプラットフォームは無いでしょう。

日本ではNHNグループ、NAVERの「LINE」が500万ユーザーを突破して大躍進していますが、遅かれ早かれ彼らも「Plus Friends」のようなものは導入してくるでしょう。「LINE」を見ている限り、UIも含めてその下地作りは着々と進んでいる気がします。だたし、NAVERの場合は最終的に検索に誘導してそちら側でのマネタイズを全体としてはメインとして考えていると思うので、facebook×belugaの思想に近いですかね。

 

インターネットの「モバイルシフト」によって起こる競争環境の変化をいち早くとらえ、より生活に寄り添った依存度の高いサービスを提供することが、今我々がすべきシンプルな原則ではないでしょうか。

最後に、今年3月のTechCrunchのこちらのエントリーを噛み締めたい。

アプリの壁

モバイルメッセージングの熱狂

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TechCrunch Disrupt で注目を集めた「QUEST.LI」がいよいよローンチ

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今年の9月にサンフランシスコにて開催されたTechCrunchのローンチカンファレンス「TechCrunch Disrupt」におけるメインイベント「Startup BattleField」 にて優勝したのはオンライン上で仮想のパーティーを楽しめるイスラエルのスタートアップ「Shaker」でした。

また、DisruptではBattleField出場者以外からも、2日間ある展示ブースの出展者の中から1日1スタートアップのみ、オーディエンスチョイスという来場者の投票によってその日最も表を集めたスタートアップがBattleFieldと同じ土俵に立つことができます。その幸運な2組のうちの1つがこのロシアのスタートアップ「QUEST.LI」でした。

 

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「QUEST.LI」のタグラインは「Secret Treasure Hunting Games in Real Life」。誰でも簡単にリアルライフ(場所)に沿ったQ&A(クエスト)を作ることができ、ユーザーはそのクエストをクリアすることによって報酬やポイントを獲得できるリアルライフゲームアプリです。今週ようやくローンチしたので早速使ってみました。日本のAppStoreからもダウンロード可能です。

発想はFoursuqareに近いですね。リアルライフの移動を「チェックイン」と「称号(バッジ)」「競争(ソーシャル)」によってゲームにしたのと同じコンセプトです。ただ明らかに違うのは「クエスト」というQ&Aをベースにしたお題と、それをクリアすることによって得られる「報酬」です。現在見た感じは無料のクエストばかりですが、報酬付きのクエストはこれからでしょうか。報酬にはPayPalを利用していますね。

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ロゴの耳を引っ張るとメニューがせり上がるという斬新なUIが特徴のiPhoneアプリ。

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場所にひもづいたクエストもあれば、こういった普通のQ&Aみたいのもあります。

ざっとサービスを眺めて、参考になりそうなポイントを3つまとめてみました。

 

1.明確なビジネスモデル

実際にDisruptに参加して、特にスマートフォンアプリのサービスにおいてはビジネスモデルはもちろんありつつも「本当に?」みたいなものもあったのですが、「QUEST.LI」の場合は単純明快でリアリティのあるビジネスモデル。このクエスト(Q&A)形式のコンテンツは、企業のブランドエンゲージメントととても相性がいいです。例えばBMWのクエストがあって、Q&Aが3〜5問。社名の由来は?とか新車の発売日は?などのクエストをクリアしたユーザーはよりBMWのことが詳しくなってかつ報酬をゲットできる。もちろん報酬の原価は企業(この場合BMW)。これが「QUEST.LI」のビジネスモデルです。ただ、「QUEST.LI」が単なるQ&Aプラットフォームと異なるのはモバイルベースで、O2O(Online to Offline)を実現している点ですね。なので「近くのBMWディーラーの看板の写真を撮ってください」みたいなクエストも可能。そう考えると「SCVNGR」に近いですね。実際SCVNGRは日産コカコーラとのプロモーション事例は有名です。実際Disruptの会場でFounderのDanil Kozyatnikovにも聞いたのですが、大手パートナー企業をいかに早く集められるかがキモだと言ってました。

 

2.周到なローンチマーケティング

DisruptでのPRはもちろんですが、正式ローンチのタイミングでもしっかりとキャンペーンを仕込んでます。いわゆるプレゼントキャンペーンで、

①期間中最も友達を招待した人にMacBookAirなどをプレゼント

②最も評価の高いクエスト作成者を週ごとにKindle FIreプレゼント

と「バイラルの仕組み」と「コンテンツの拡充」に焦点を当てたバランスの良いキャンペーン。Webサイトもしっかり作り込んでます。こうやって進捗の「見える化」はキャンペーン参加率を確実にUPさせますね。

Prize

 

3.国境を越える

Startup BattleFieldで優勝したShakerはイスラエルのスタートアップ。実はオーディエンスチョイスで選ばれたもう1組のスタートアップも以前紹介した「CardFlick」というサービスで、こちらもイスラエルのスタートアップ。そして「QUEST.LI」はロシアのスタートアップ。もはや国境は関係ありませんね。シリコンバレーを拠点として戦うのはメジャーリーグで戦うようなものなので、もちろん国内で成功するよりも難しいと思います。ただグローバルにサービスを展開する舞台に立つというのは、昔に比べたら圧倒的にハードルが低くなったのは事実。こうやって北米以外のスタートアップがしっかりとTechCrunchの舞台で結果を残しているので、引き続き広い視野で頑張りたいと思う次第です。

 

最後に、「QUEST.LI」のプロモ動画。音楽とマッチしていて良いですね。

2009年からTopアプリを維持する「WhatAppMessenger」はこんなにスゴかった

Whatsappicon

ある程度のスーマートフォンユーザーだったら一度はこのアプリのアイコンを見たことがあるのではないでしょうか。

WhatAppMessenger」は2009年の7月にリリース以来、iPhone・Android・Windows・BrackBerry・Symbianと広域なマルチプラットフォームで展開するメッセンジャーアプリです。

ただし、日本の日本人ユーザーにとってはあまりなじみが無いのかもしれません。それもそのはず、本アプリがウケているのはSMSに都度課金される海外キャリアの料金体系をDisrupt(破壊)したからです。日本ではSMSが無料なのは当たり前ですが、海外では当たり前ではありませんでした。「SMS感覚で無料でメッセージのやりとりができる」アプリをいち早く実現したのが本アプリです。日本にいても海外の友達とSMSをする場合は料金が発生すので、日本にいる海外の人の利用率はものすごく高いですね。

なじみの無い方も、いかに本アプリがスゴいかはこちらの実績を見れば一目瞭然。

▼the highest ranking of AppStore overall by appannie

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長くてすいません(笑)

全国でのAppStoreの最高ランキングをAppannieで調べてみると、一部の国を除いてほぼ有料総合で1位を獲得。こんなスゴいアプリをどこの誰が、どのようにしてリリースし運営しているのか。今までほとんど表に出なかった情報がこの度、CEOのJan Koumとco-founderのBrian ActonがFinacial TImesなど一部メディアのインタビューを受ける形で明らかになりました。以下にざっとまとめてみたいと思います。

 

【実績】1日あたりのメッセージ数は10億以上

250カ国、750のネットワークで利用されているWhatsAppMessengerは2009年末に100万ユーザーを獲得した後、2010年には10倍に増加し、現在のアクティブユーザー数、ダウンロード数は明らかにされていませんが数千万人と言われています。また、1日に50万ダウンロードという実績もあるみたいです。Android Marketを参照するとダウンロード数は1000万以上、レビュー数は約370,000というブッチ切り。またさらに驚異的な数字なのがこの1日あたりのメッセージ数。たとえば1日のアクティブユーザー数が1000万人だったとしたら、ユーザーは毎日100メッセージを送っていることになります。1億だと仮定しても10メッセージ/日。高いアクティブ率と、あらためてモバイルメッセージングサービスの依存度の高さを感じざるをえません。また10億という数字も、Twitterの1日あたりのツイート数が現状2億〜2億5000万と言われていますから、そのスゴさが伺えますね。

 

【創業】元Yahoo!のVPエンジニア2人で立ち上げ

シリコンバレーのスタートアップならば既にローンチ前に注目を集め、場合によっては巨額の資金調達を行っている場合が少なくありません。そしてローンチのタイミングでは大量のバブリッシングを行い、ネットワーキングにも積極的に動くのが普通だと思います。

Jan Koumとco-founderのBrian ActonはYahoo!時代に出会い、ともに何百万のユーザーを構築するノウハウを得た後、WhatsAppの創業に至りました。KoumはYahoo!を去った後のオフにWhatsAppの最初の構想を思いつき、ファーストローンチの時点では今の自分のステイタスをブロードキャストするだけのアプリでした。その後Antonがジョインし、メッセージング機能を加えたことによってWhatsAppはブレイクしました。

出資関係に関しても謎が多いのですが、設立時期においては元Yahoo!のエグゼクティブシニアエンジニアCharles Kung氏に出資とアドバイザーに就いていたとのこと。公には唯一今年の4月にSequoia Capitalから$8Mの出資を受けたことを明らかにしています。

彼らの主張は一貫しています。

「我々は多くを語る必要はない、すべてはプロダクトが語ってくれる」

カッコイイ。

 

【チーム】エンジニア17名で開発中

チーム体制は20名、うちエンジニアは17名とのこと。何を隠そう、今になってメディアの取材を受けだしたのは資金調達のためでもアプリのバブリッシングのためでもなく、優秀なエンジニアを採用したいからだそう。ちなみに他3名はカスタマーサポート。マーケティングコストはかけていないので、エンジニア以外いない。デザイナーもいないのだろうか?確かにアプリを見る限りは飾りっ気はゼロですね。

 

【競合優位性】なぜWhatsAppMessengerな人気なのか?

彼らがサービスをリリースした時、他のメッセージング系サービスとは明らかに異なるアプローチでした。つまりSkypeやYahoo!、MSNはあくまでデスクトップベースでのアプローチ。モバイル対応をしても、あくまでデスクトップサービスがベースとなっています。そこでWhatAppはとにかくモバイルフォーカス、そして「いかにほんの数秒でSMSからWhatAppに乗り換えるか」にフォーカスしてサービスのグラウンドデザインを行っています。

今ではモバイルベースでサービスを構築するのは珍しいことではないですが、当時としてはエッジの立ったアプローチであり、また何よりモバイルキャリアのビジネスモデルとユーザーとのギャップに着目してDisruptしたことがウケたのでしょう。

 

【マーケティング】マーケティングコストはゼロ

彼らは製品を作ることに集中し、マーケティングコストはほぼゼロ。広告も打たなければブロガーやメディアの記者へのパブリッシングもしない。実際WhatsAppは口コミで広がっています。Skypeなどと同様、使用するには相手にも同様なアプリケーションが必要なので、気に入ったユーザーは友達を誘い、それがまた友達を誘い、徐々に口コミで広がっていったそうです。こういったクローズドサービスの口コミは初速の爆発力こそ無いですが、特定のセグメントやコミュニティでのシェアがティッピングポイントを越えると安定かつ倍々で拡大していきますね。この壁を越えるのは至難の業ですが、このサービスに着目してどこよりも早くサービスを提供したのが成功の要因かと思います。

【マネタイズ】ダウンロード課金$0.99

多くのメッセージング系サービスが「FREE」てに提供している中、彼らは課金モデルで成功しています。iOS版は$0.99ダウンロード課金。それ以外のプラットフォームは初月は無料、それ以降は3年あたり$1.99というシステム。コミュニケーション系のサービスは最初のハードル(課金や登録など)をいかに下げて先ずは使ってもらうか、が個人的にはキモだと思っています。なのでAndroid以降で導入している課金システムがベストではないでしょうか。

 

【最後に】このスタートアップから学ぶことは何か?「Focus」という魔法

co-founderのKoum曰く、

我が社は広告のことは考えず、ユーザーデータをマーケティングに使おうなどとも考えていない。とにかく良いプロダクトを作ること。だから有料課金のシンプルな仕組みにして後は収益の心配などせずに良いプロダクトを作ることにFocus(集中)した。

こうやって彼らはすべてにおいて「良いプロダクトを作る」ことだけに集中し、最小限の人数と最小限のマーケティングコストでWhatsAppを創ってきました。

その結果が前述の実績だとするとなんだか魔法のように思えます。もちろんまだまだ知り得ない部分や調査、考察の足りない部分はあるとは思いますが、それ以上に「Focus」ということを徹底することによってこれだけのメリットがあることはまぎれも無い事実ではないでしょうか。

 

決断とは何かを捨てること。

すべての物事はトレードオフ。

 

エッジを立て、極端であることこそ、成功への近道なのかもしれません。

 

[参照]

WhatsApp users get the message | ft.com

 

WhatsApp bucks convention, quietly builds a messaging titan | GIGAOM

one billion messages | WhatApp Blog